リスクを嫌がる意思決定者

 理論上、企業はリスクのある投資をすることによって、株主価値を創造するとされている。投資の規模は、一つの失敗で企業が倒産するほどではないにしろ、かなり大きくなる場合がある。

 それでも、たとえ失敗する投資が多かったとしても、成功したもので相殺できれば問題とはならず、そうなるのが一般的だ。こうした投資の考え方は、1950年代から経済理論によって裏付けられている。ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツによる、ポートフォリオ最適化の理論である。

 しかし現状を見ると、大企業の経営幹部は、リスクの高いプロジェクトをすすんで提案したり、支援したりはしない。むしろ、わずかな改善やコスト削減、そして「安全な」投資を優先させて、新たなアイデアは却下してしまう。