なぜ収益機会を
PEファンドに譲ってしまうのか

 2013年、巨大化学会社デュポンの当時のCEOエレン・クルマンは、業績改善を求める株主の圧力を受け、ポートフォリオの中で成長率と利益率がともに低い事業、デュポン・パフォーマンス・コーティングスの売却を決断した。

 プライベートエクイティ(PE)ファンド大手のカーライル・グループが、13億5000万ドルでこの事業を買収して完全子会社化し、社名をアクサルタとした。カーライルはすぐさまアクサルタの大がかりな事業変革に着手し、その一環として発展途上国を中心に積極的な投資を行った。

 わずか21カ月後には、アクサルタは目覚ましい業績を上げていた。そこでカーライルはアクサルタの株式を公開し、全株式のわずか22%を売却しただけで投資総額をほぼ回収した。買収から3年半が経過した2016年には残りの株式を売却、当初の投資に対する見返りは総額58億ドルとなった。