データ分析を専門家に依存せず、迅速にデータ活用できる環境が重要
――世界最大の小売業であるウォルマートや動画配信サービスのHulu、建設機械世界最大手のキャタピラーなど、名だたる企業がThoughtSpotを導入しているそうですね。
有延 そうした世界的企業は、世の中に出回っているデータ分析ツールは全て使っていると言っていいほど、分析ツールには精通しています。そのうえで、ThoughtSpotを新たに採用していただいたのは、谷中さんが言ってくださったようにビジネスユーザーにとっての使い勝手のよさとスピードの速さが、他のツールには類を見ないものだからです。
たとえば、ウォルマートはネット販売とリアル店舗をうまく融合させることによって、コロナ禍においても業績を目覚ましく伸ばし、DXの成功事例として改めて注目されています。
同社では、ネットとリアルを融合させたことによって、購買履歴データや在庫データなど分析対象となるデータが幾何級数的に増えています。その膨大なデータを、現場のビジネスユーザーがIT部門などにいる専門家に依存することなく、迅速に分析し、意思決定に活用するためにThoughtSpotを使いこなしています。

ただ、企業がデータ活用を通じたDXを実現するうえで、ThoughtSpotが提供できる機能や価値には限界があります。その意味で、Trusted Data Foundationというデータ活用のプラットフォームと連携することによって、ThoughtSpotが日本企業のDX実現のお役に立てる機会が大きく広がるものと確信しています。
谷中 いまウォルマートの例で有延さんが触れたように、専門家に依存せずにビジネスユーザーが能動的に分析したり、レポートを作成したりしてスピーディに意思決定できることが非常に重要で、日本ではそうした企業はまだとても少ないと思います。
たとえば、ある企業の支店の人が分析レポートを作成しようとして、必要なデータを集計してくれるように本社のIT部門に依頼したところ、IT部門は情報システム子会社に問い合わせ、その子会社はシステムの開発・運用を委託している外部のITベンダーに問い合わせた。そういうことが実際に行われている企業もあります。
これでは、分析レポートを作成するのに何日もかかってしまいますし、苦労してレポートを仕上げたころには、ビジネスの環境は変わってしまっていて意思決定の役に立たないという事態になりかねません。
有延 調査会社のガートナーによると、世界全体で12億人ものビジネスユーザーがいるのに対して、データサイエンティストやデータエンジニアなどの専門家はわずかに150万人。多くのビジネスユーザーが限られた専門家にデータ分析を依存しているため、分析レポートができあがるのに平均で4.8日かかっているそうです。この状況では、データ活用は進みませんし、現場の生産性も上がりません。
みなさんがよくご存じのように、日本は生産性の危機に直面しています。日本生産性本部が2019年12月に発表した国際比較では、日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟36カ国中21位で、G7(主要7カ国)の中では最下位の状態が続いています。
少子高齢化による労働力人口の減少が進む中で、生産性を抜本的に高めていくためにも、フロントラインワーカーが迅速にデータ活用できる環境を整備することは、日本にとって喫緊の課題です。