正しいシナリオ思考で、異なる未来と戦略をつなぐ

 以上のように、中期経営計画型の思考にとらわれていては、ダイナミックな手を打ちづらく、不確実性の高い世界で生き残っていくことが難しくなる。未来を正確に予測できる人はどこにもいないが、シナリオプランニングを生かせば、複数の選択肢を持ちつつ、過去と非連続な未来に、組織や戦略をスムーズにつなぐことができるのだ。

 日本では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請が解除され、世界でも経済活動再開の動きが始まっているとはいうものの、その状況は予断を許さず、今後の推移を見通すことはいまだに難しい。しかし、さらに危機が拡大するにせよ、このまま終息に向かうにせよ、ポストコロナの世界が、もはや過去と同じにならないことは確実だ。こうした不可逆的な環境変化に対して機動的に戦略オプションを入れ替え、実行していく経営は、これからますます強く求められるだろう。いざというときに別のシナリオにスムーズに移行し、企業価値を連続的に向上させることができるよう、大きな変化の渦中にある今こそ、シナリオプランニングを正しく理解し、戦略構築に導入すべきではないだろうか。