職場で過度のストレスを抱える
トランスジェンダーの人々

 たいていの人にとって、仕事というのはそれ自体ストレスが多いものだ。

 そこへさらに、ジェンダー表現に関する社会規範に合わないからという理由で、自我の基本的側面の一つであるジェンダー・アイデンティティを否定・抑制しなければならないという、心理的負担が加わることを想像してみてほしい。また、毎日会う仕事の同僚に「本当の自己」を明かした結果、拒絶、排斥または無視されてしまった時にどう感じるかを想像してほしい(たぶん想像するまでもないだろうが)。

 多くのトランスジェンダーの人々は、こうした問題にたびたび遭遇する。差別され、汚名を着せられ、敵意を向けられ、おまけに、社会(職場を含む)における自分のアイデンティティを他者の期待に沿うよう「コントロール」せよと圧力をかけられる。そうした経験は、彼らの精神的幸福や仕事満足度、この会社で働き続けたいという意欲を損なう、数多くの心理的反応を引き起こしかねない。