かつてない規模の新型コロナ危機

 2014年に創設され、2019年に株式公開を果たした企業のCEOとして、私はスラック・テクノロジーズの全チームとともに事業展開が急加速する時期を幾度となく経験してきた。現在、従業員数は2000人を超え、10万以上の有料顧客を抱えてグローバルに事業を展開しているが、当社のスタートアップ精神は失われてはいない。私たちが構想するのは、どのような規模の組織でも機敏性(アジリティ)を容易に実現できる世界であるが、その機敏性は私たちが目指すものでもある。

 しかし、この2020年3月の活動のスピードと焦点の明確さは、これまでのどの経験にも勝るものだった。新型コロナウイルス危機の影響の大きさが明らかになるにつれ、私たちは2つの課題への対応が必要となることを理解した。すなわち、顧客需要の激増とリモートワークへの待ったなしの移行である。

 3月第1週はそれまでと大きな変化はなかった。中国での大流行とアジアへの拡大のおそれにより、私たちは東京と大阪オフィスの閉鎖をすでに決定していた。また、3月9~13日に予定されていた800人が参加する年次グローバルセールス集会は、オンラインイベントのみを実施することに決め、在宅勤務の選択に関する方針を発表するとともに、全社に出張を制限するよう促した。日本、韓国、イタリアにおいては、新チームを増設することにした。これらの国々を含む新型コロナウイルスの流行地域でリモートワークに移行しつつある人々を対象に、ウェビナーや一対一のライブコンサルテーションをはじめとする新たな支援法を立ち上げるためである。