軍事における上位下達の命令は、絶対服従ではない。軍隊は、信頼と権限委譲に基づく「チェーン・オブ・コマンド」によって成立する。軍令だけでは軍は動かないのである。受容されうる作戦計画とは、参謀の不断の努力と現場に対する理解、信頼のうえに築かれる。その環境を整えるのが、軍政と教育の役割だ。第二次大戦時の日米軍の決定的な違いもここに見て取れる。戦力の実体とは、最高指揮官・幕僚長から一兵卒に至るまで、各々が地味な信頼を得るための、小さな決心の積み重ねである。すなわち、軍事のリーダーシップとは、ボトムアップなのである。