顧客との相互学習で重要なのは、リーダーの問いかけ
長崎 確かにそうだと私も感じます。相互学習のプロセスを回すうえでポイントとなるのは、リーダーの問いかけだと思います。現場はどうしてもお客様の声をそのまま受け止めがちですが、リーダーが細かいところに気付いて「それが本当にお客様のためになるのか」「お客様の本質的課題を解決できるのか」と問いかけることが大事です。
名和 シリコンバレーでは、「イノベーション@エッジ」という言葉をよく聞きますが、新しいことは組織の中枢ではなく周縁で起こる。その点で、アマゾンのピザ2枚チームは理にかなっていますが、私が十分条件の1つとして挙げた「スケールさせるためのアルゴリズム」がないと、大きな変革はできません。チームが自律的に動きながらも、周囲を巻き込んでスケールさせていく仕組みはあるのですか。

代表取締役社長
長崎忠雄氏
長崎 先ほど申し上げたように、新しいことを始める際にはプレスリリースを書いて会議で議論するわけですが、簡単にはゴーサインは出ません。その会議でいろいろなインプットをもらって、プレスリリースを書き直します。これを何回か繰り返すことによって、最終的にゴーサインが出るわけですが、その過程を経て、このプロジェクトは集まった会議メンバー全員が合意したものとなります。それによって、チームリーダーは最大限のオーナーシップを発揮して、プロジェクトを進めることができます。
その後、プロジェクトがうまくいき、スケールさせる段階では人員や資金などのリソースが必要になりますので、そこでチームリーダーはビジネスプランとなるメモをもう一度書きます。社内では「ナラティブ」と呼ばれています。
名和 ナラティブというからには、単なる数字の羅列や文章の箇条書きではなく、みんなが納得し、共感できるストーリーになった提案書ということですね。
長崎 そうです。PowerPointは、話術やスライドのテクニックによって、会議を支配することが可能です。かたや、ナラティブは、誰が書いても文字は文字でしかありませんので、書き手の深い思考プロセスや論理展開が最も重要視されます。また、チームをつくるときには気の合う者同士を集めるのではなく、厳しい意見や正しい意見を言えるメンバー編成にしないといけません。
このナラティブをもとに会議で議論をし、そこで厳しい指摘や多角的な意見をもらいながら承認を得ます。ナラティブは、論点や思考を常に明確にするという点でアマゾンでのビジネスには欠かせないものです。
アマゾンの変革メカニズムを実体験できるプログラム
名和 DXのD(デジタル)はあくまでも変革のイネーブリングツールであって、うまく使えば変革を加速させることができますが、肝心なのはDよりもX(トランスフォーメーション)です。つまり、AWSのクラウドサービスは変革を加速させることはできても、アマゾンのように変革のメカニズムが組織にビルトインされていないと、DXは実現できないということになります。
長崎 その通りです。この点をご支援させていただきたく、変革をリードするビジネスリーダーに向けて、アマゾンのカルチャーや変革のメカニズムを実体験していただけるプログラムを提供しています。
たとえば、「エグゼクティブブリーフィングセンター」(EBC)では、イノベーションにチャレンジする組織文化を含めて、アマゾンの変革メカニズムについてご紹介していますし、クラウドコンピューティングをツールとして使い、新しいビジネスをつくっていくプロセスを体験していただくために、エグゼクティブの方々が実際にAWSのコンソールに触れる体験ハンズオンもご用意しています。EBCは昨今の事情を鑑み、オンライン、オフラインでの開催が可能です。
また、「デジタルイノベーションプログラム」では、先ほどご紹介した「Working Backwards」で、お客様の視点から逆算して製品やサービスを企画・設計することを体験することができます。このプログラムを通じて、実際にサービスを開発し、事業化された企業もあります。許可を得て実際に体験されたストーリーもWebにて公開しています。
(AWS Leaders' Voice:https://aws.amazon.com/jp/executive-insights/japan/)
経営トップのコミットメントのもとDXを推進しようとしている企業の方々は、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
URL:https://aws.amazon.com/jp/