多くの企業が陥る4要件における意外な盲点とは

 もはや革新的なサービスを一企業だけで生み出し、提供することが難しい状況であることは衆目の一致するところであり、そうした背景で、APIの活用に期待が集まることは当然のことといえる。しかし、自社のサービスに外部のAPIを組み込んで利用者として「使いこなす」だけでは事足りない。自社の技術資産も積極的にオープンAPIとして公開し、他社に「使いこなされる」ことで、複数のエコシステムの中にポジションを得ていくことが重要であり、それこそがデジタル化が進む両極化の時代における企業の競争力の源泉につながるのである。

 しかし、まず必要なのは「使いこなす」ことができているかどうかを見つめ直すことである。APIの数が指数関数的に増大している現在の状況下では、顧客はサービスの利便性や自身の業務との親和性によってAPIを選択することが多くなっている。例えば、SNSと連動するかどうかや、すでに利用している決済サービスに対応しているか否かといったことによって、そのサービスを選択するか否かが決まる。企業はこういった顧客体験を考えるときに、さまざまな顧客の背景や要件に寄り添いながら、自社サービスの開発を実施しなければならず、さらにそこにはスピーディーさも求められる。そのためには、その企業自身の付加価値部分について、しっかり定義付けをした上で、そこに開発リソースを注力し、コストの最適化に考慮しながら進めていく必要がある。

 こうした適切な開発によって、今後の競争力の源泉となる「使いこなされる」ことを実現すれば、成長スピードを指数関数的に加速させることができるであろう。そのためには、「使いこなす」「使いこなされる」という双方の視点を踏まえたAPIライフサイクルの戦略立案が重要になってくる。

 この戦略立案に有効なことの一つに、APIを「自社のプロダクトの一つ」と捉え、APIのライフサイクル全体をマネジメントする視点を持つことが挙げられる。「APIライフサイクルマネジメント」においては、当然のことだがAPIの公開がゴールではない(図表)。まず開発段階で戦略的な「使いこなされ方」のデザインを織り込み、ターゲットに応じた粒度を設定し、リリース後も想定したターゲットから見つけてもらうための施策を打ち、継続的にユーザーからデータを収集し、それを分析することで随時最適化を図っていく。こうしたきめ細かいマネジメントを通じてフィードバックループを回し続け、APIという「プロダクト」を継続的に育てていくのである。こうした取り組みが、APIを「使いこなす力」と「使いこなされる力」を共に磨くことになる。

 APIを公開することによって、全ての企業が必ずしも直接的な売り上げや利益を得られるわけではないが、優れたAPIマネジメントの実践は、優秀なビジネスパートナーを引き付けることになり、結果的にビジネス上で得られるメリットは非常に大きい。逆にいえば、こうした備えがない企業は、どれだけ製品やサービスのポテンシャルが高くても、同じエコシステムの一員として未来像を共有することが難しいと判断され、ビジネスパートナーから見捨てられることになるだろう。

 コロナショックにより急激にデジタル化が進むビジネスの状況下においては、変化し続ける要求に応えながら新しいサービスを提供し続ける能力が必要不可欠だ。そんな中、APIマネジメント力を磨く取り組みは、時代に適応した組織の変革を促すという意味でも非常に重要だ。ITアーキテクチャの見直しは、そのための転換点であり、出発点といえる。つまり、社外と連携した新たな価値創出力の向上と、企業内部のデジタルトランスフォーメーションの推進という、両極における進化を促す取り組みといえるのだ。