スイスの著名ビジネススクール、IMDが発表した2020年の「デジタル競争力ランキング」で日本は世界27位、前年より4つ順位を落とすという不名誉な結果となった。この状況からデジタル変革をどう加速していけばいいのか。2020年4月に誕生した日本発の「変革創出企業」のトップに聞いた。
Ridgelinezとは何者なのか

Ridgelinez代表取締役社長
富士通を経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンに14年在職。その後、SAPジャパンのバイスプレジデント、ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ブーズ・アンド・カンパニー代表取締役、PwCコンサルティング副代表執行役を経て、2020年4月より現職。
――Ridgelinez(リッジラインズ)を設立された目的や背景について、説明していただけますか。
今井(以下略):Ridgelinezは、日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)という大きなテーマの下に生まれた会社で、私たちは「変革創出企業」と自己定義しています。
Ridgelinezの存在意義は3つあります。1つ目は、すべての変革を「人」を起点に発想すること。変革に挑むのも人なら、変革の先にある未来を生きるのも人です。DXというと、テクノロジーが注目されがちですが、テクノロジーが急速に進化し、非常に安価に使えるようになった結果、経営のアジェンダはむしろ人に移っていると私たちは考えます。誰もが最新のテクノロジーを安価に使えるため、テクノロジーによる差異化は難しいからです。テクノロジーが進むほど、人の役割がどんどん重要になるというのが私たちの認識です。
2つ目は、企業の変革に挑むチェンジリーダーをエンド・トゥ・エンドで支え抜くということです。変革とは目指すべき未来に向かって、高い山の頂を目指すようなものです。そこにたどり着くには険しい稜線(ridgeline)を登り切らなくてはなりません。当社の社名は稜線にちなんで名付けたものですが、私たちはヒマラヤ登山のシェルパのように、チェンジリーダーが稜線を登り抜く最初から最後までをサポートします。

そして、3つ目は「人」と「チェンジリーダー」をつなぐということです。変革は一人で成し遂げられるものではありません。企業のチェンジリーダーと従業員、顧客、取引先やパートナー企業などさまざまなステークホルダーが互いを理解し、それぞれの意識と行動がつながることで変革が達成されるものだと思います。そのように人とチェンジリーダーをつなぎ、誰も見たことがない景色を生み出すことを私たちは目指します。
――多くの企業が変革の必要性を認識し、DXに取り組みながらも、それを成し遂げられずにいます。要因は何でしょうか。
DXの障壁は主に3つ挙げられます。第1の障壁は、DX自体が目的化し、戦略性が希薄なこと。第2は、ツールありきで話が進んでしまい、ツールを導入した時点で終わってしまうなど、技術者起点・供給者視点が強すぎること。第3は、プロジェクト開始前からビジネスへの素早い実装と活用を織り込んだ設計思想、ソリューションの開発・選択になっていないことです。実装に2年も3年もかかってしまうようでは、時代の変化に取り残されてしまいます。
本来あるべき姿としては、まず明確な戦略を持つこと。つまり、その企業にとって本質的な課題を特定し、ビジネスモデルを再定義することです。次に、技術者起点・供給者視点ではなく、あくまで実際に使う利用者の視点で提供価値を考え、必要なソリューションを選択すること。そして、当初からビジネスへの実装と活用ありきで、実現方法を複数の道筋で検討することです。
――その変革プロセスを、御社は具体的にどうサポートするのですか。
戦略策定からビジネスモデル/ソリューションの設計、業務プロセス/アーキテクチャー設計、オペレーションシステム開発、戦略実行、そしてエコシステムの構築・運用まで、変革のプロセスをまさにエンド・トゥ・エンドで支援します。
そのために当社には、課題の構造化、あるいは変革の戦略的なターゲット設定を経営陣と一緒に考える「Industry DX Strategy Consultant」、設定した課題に沿って豊富なドメイン知識をもとに具体的なソリューションを考案する「DX Competency Consultant」、実装をイメージした具体的な技術を提案したり、アジャイルにプロトタイプを開発したりする「DX Technology Consultant」という3つの領域のエキスパートが参画しています。そして、そのエキスパートたちがチームを組成し、ワンストップで変革をサポートします。
特に、実装をイメージしてDX Competency Consultantが提案するところは、当社のユニークさであり、半年から1年の短期間でお客様が変化を実感できる仕組みを提案できます。
――御社は富士通グループに属しているわけですが、技術的中立性という点についてはどのようなスタンスで臨むのですか。
ここは強調しておきたいのですが、クライアントファーストが私たちにとっての大前提であり、お客様の変革を実現するために必要なツールや技術をフラットに提案します。その点については、富士通の経営陣とも合意しています。中立的な立場で富士通以外も含めた、あらゆる選択肢の中から最適な提案を行います。
また、必要に応じて各業界や専門分野で豊富な実績を持つパートナーと協業し、戦略的なアライアンスによってお客様の変革を後押しします。