重きを置くべきはDよりも、むしろX

 私は、「変革をテクノロジーでサポートするのがDXだ」と言っています。これは、日本におけるERP(統合基幹業務システム)導入の歴史を振り返ると、よく理解できると思います。

 ERP導入の目的は、組織における業務の標準化とグローバル対応にあったはずですが、多くの日本企業は業務プロセスの変革を行うことなく、ERPパッケージをカスタマイズして、既存の業務プロセスに合わせていきました。そのため、欧米企業に比べてERPを導入してもビジネスのパフォーマンスが上がらないという結果を招いてしまいました。業務プロセスを変革していないのですから、パフォーマンスや投資対効果が上がらないのは当然です。

 DXも同じで、重きを置くべきはDよりもむしろXです。デジタルにばかり注力しても何も変革できません。業務プロセスや戦略の立て方、人材マネジメントのあり方といったアナログな部分を変革しない限り、成果は得られないのです。

 つまり、変革の勝負所は、アナログな部分にあるといえます。企業文化や従業員のマインドセットを変えないと、変革はできないという指摘があります。それは間違いではありませんが、文化やマインドセットは目に見えないので、変化をとらえることが難しい。一方、わかりやすいのは、何をしたか、何をするかという行動です。

 たとえば、クラウド上のストレージを使ってデータレイクを構築し、企業内や企業外部のさまざまなデータを集め、それをダッシュボードに視覚的に表示できるシステムを導入したとしましょう。最新のテクノロジーを使えば、難しいことではありませんし、巨額のコストをかけなくても、そうしたシステムは導入できます。

 しかし、そのシステムを導入しただけでは、何も変わりません。どういうデータを、いつ見るか、見た結果何を判断して、どんな行動を起こすのか。そうしたことを習慣付けることで、人が変わり、組織が変わっていくのです。冒頭に、「テクノロジーが進化し、安価に使えるようになったことで、経営のアジェンダは人に移っている」と申し上げたのは、そういうことです。

 データを可視化するだけではだめで、見えた結果、人の行動が変わらなければ意味がない。あるいは、頭でわかっていても、体がついてこなければ何も変えられない。その意味で、変革は人を起点に発想し、アナログな部分を変えていくことが重要なのです。アナログな変化をデジタルで加速させていけば、企業文化や従業員のマインドセットもおのずと変わっていきます。

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