短い時間軸で変化を実現していく
――変革に取り組むうえで、経営者やチェンジリーダーにとっての大事な役割は何ですか。
いくつかありますが、最も大事なのは、なぜ変革しなくてはならないのか、「Why」を明確にすることです。
変革は経営トップやチェンジリーダーが一人でやるものではありません。組織のみんながフラットにコミュニケーションしながら、一人ひとりが変革の必然性を理解し、共有し、自分事として取り組まないと変革を起こすことはできません。そうした姿勢と仕組みをつくり上げていくことが、経営者の重要な仕事です。
変革とは、いままでのビジネスそのものや仕事のやり方を変えることですから、できればやりたくないと思うのが人情です。一生懸命積み上げてきたものを根底から崩すことだってあるわけですから、抵抗はあって当たり前です。
それでも、変えないとそのビジネスが、あるいは組織そのものが立ちゆかなくなる、死んでしまうかもしれない。そのことを客観性を持って、みんなが腹落ちするまで理解できる言葉で経営者が語る、語り続けることです。
――組織の一人ひとりに変革の意味合いや必然性を理解してもらうのは、簡単なことではありません。
客観性があってみんなが共通理解できる言語を使って、語りかけることが有効です。その言語とは何かといえば、データです。その意味で、データドリブン経営が重要であり、DXとは切っても切れない関係にあります。
私たちは課題の構造化と言っていますが、なぜ変えないとだめなのかを突き詰めていくと、だいたい2つか3つのポイントに収斂します。そこにスコープを絞って、組織全体でやり切ることです。
「Why」を明確にできたら、次に何をどこまで変えるかという「What」も明示する必要があります。ごく単純化して言えば、4つある事業のうち2つを変える、その2つについては生産性を30%上げるといったことです。
そこでRidgelinezがトライしようとしているのは、お客様のビジネスをここまで変えると、これだけのアウトカムが出ますということを客観的なデータに基づく仮説で示すことです。100%確実な仮説ではありませんが、60%くらいの確度はありますから、実際にトライしてみませんかと。私たちはそういうアプローチで、お客様のDXのスタータースイッチを押していきたいと思っています。
もう一つ付け加えると、チェンジリーダーにとって大事な仕事として、マイルストーンの管理があります。たとえば、変革を4年でやり切ると決めたら、1年目で課題を構造化し、何をどこまで変えるのかを決め、変革の号令を出す。2年目から具体的な変革を進め、3年目で結果を出しにいく。大ざっぱに言えば、そういうマイルストーン管理です。号令だけ出して、後は任せたという姿勢ではだめで、マイルストーンに沿って節目節目で進捗を管理し、やるべきこととやめることを意思決定する。それはリーダーの役割です。
チェンジリーダーの人たちに意識していただきたいのは、大きな変革ほどだらだらと続けてはいけないということ、そして、企業が変わるのは自分で考えているよりも長くかかるということです。
だらだら続けていると変革のモメンタムが弱くなっていきます。一方で、4年でやり切れると思っていると、5年、6年とかかってしまうことがあります。ですから、変革には短期決戦で臨み、集中的に取り組んだほうがいい。
そのためには、アジャイル開発の手法を取り入れるなどして、仮説・検証のサイクルを高速で回すことが必要です。まずやってみて、何か問題があったら次の仮説・検証サイクルを回す。
そのようにして、短い時間軸でプラクティカルな変化を実現していくのが、変革に重要な「How」です。