戦略転換は必要だが
説得力が求められる
1908年、ノルウェーのロアール・アムンセンは北極遠征の計画を立てた。科学者の時間や装置を借り、ノルウェー議会から助成金を受け、このプロジェクトに多額の資金援助をするよう他の支持者を説得。重量400トン、3本マストのスクーナー船「フラム号」を手配し、凍ったベーリング海峡への命がけの旅をいとわないクルーを募った。ノルウェーの一般市民は、アムンセンが未踏の地にノルウェー国旗を立てることを想像して応援してくれた。
ところが、出航の直前になって、アムンセンは米国人のロバート・ピアリーとフレデリック・クックに北極点到達で先を越されたことを知らされたのである。さて、どうすればいいのだろうか。
アムンセンが抱えたジレンマはどれも、起業家には嫌というほど馴染みがある。野心的な試みを始めれば、多大な支援が必要となる。資金やスタッフを集めたり、メディアに取り上げてもらって信頼を得たりしなくてはならない。このすべてを手に入れるために必要なのが、出来のいいストーリーだ。