建築学担当の教授として立体幾何学を学生に理解させようと奮闘していたエルノー・ルービックは、あるパズルをつくり出した。このパズルが、1980年に世界的に生産販売されるようになると、何十年にもわたって人々の想像力を刺激し、心をつかむようになったルービックキューブである。ルービックキューブは3億5000万個以上が販売され、史上最も人気のある玩具の一つになった。

 現在、ルービックはSTEM教育[注1]、および芸術教育の確固たる提唱者であり、母国ハンガリー、そしてそれ以外の国にもこの変革を導くように呼び掛けている。最初の著書、Cubed: The Puzzle of Us All(キューブ:我々全員のパズル[注2])が上梓された。

HBR(以下太字):キャリアにおいて、誰に刺激、あるいは影響されましたか。

ルービック(以下略):私が感心させられるのは人ではなく、その人が何をしたか、何をしているかです。文学、芸術、工学の分野でどのように物事が達成されるかに感銘を受けます。

 そんなわけで名前は挙げられません。その人が創造したものだけです。もし私が世に知られているとしたら、それは私がほかの人と違うからではなく、ルービックキューブとその中に存在するものゆえでありたいです。

 よい教師の条件は何ですか。

 知っていることを学生と共有することは大事です。しかし、もっと重要なのは、彼らの能力を見抜くこと、彼らが自分は誰であるのか、何ができるのかを発見するのを後押しすることです。

 学習は、知識の積み重ねではありません。学習とは、いままでにない環境で新たな可能性を見つける能力を育てることです。

 どのようにルービックキューブを思い付きましたか。

 私は幾何学、建築、立体の研究に関心があり、3次元変換を説明するツールを探していました。それがルービックキューブの発見につながりました。

「発明」という言葉は好きではないです。なぜなら、実はすでに存在しているけれど、他の人には見えない、触れられないものを見つけ出すことにすぎないからです。

 道を歩いていて、石ころを目にすることがあるでしょう。しかし同じ道を歩いていても、ダイヤモンドになる可能性を秘めた石に目を留める人もいるかもしれません。ダイヤモンドの性質は隠れて見えなくてもです。望ましいのは、中に何があるのかを見つけ出す忍耐力もあることです。

 ルービックキューブを海外で売ろうとした時にどんな障害がありましたか。

 何かをつくる時は、それに価値があることを人に証明する必要があります。自分に賛同してくれる人と出会うのには時間もかかりますし、運も必要です。専門知識があり、実験をいとわないパートナーが必要です。一緒に歩むのにはチームワークも欠かせません。

 最初のルービックキューブを製作したのは、ハンガリーのごく小さなメーカーですが、その会社と一緒につくったルービックキューブは、とても人気が出ました。

 そういう背景があったこと、そして海外からの関心が高まったこともあって、鉄のカーテンの閉鎖的経済の外にパートナーを求めました。最終的に米国の玩具会社を見つけて、取引が成立しました。そこから熱狂的に流行し始めたのです。

 のちにルービックキューブシリーズでほかの商品も開発しましたね。どのようにイノベーションを続けたのですか。推し進める価値があるアイデアはどれかを、どのように決めるのですか。

 ほとんどの人にはたくさんアイデアがあります。私が人と違うのは、自分のアイデアを評価するセンスが優れていることだと思います。あるアイデアに何らかの価値を見出したら、完全なものにするまでは諦めません。

 しかしもしかすると一番大事なのは、私は自分がやっていることが好きなのだ、ということかもしれません。目標を達成するうえで、それは重要な要素です。

 商品がヒットしたら、それに匹敵する成功を収めなければと常にプレッシャーを感じますか。

 こんなふうに絶頂に達するとは予定外でしたし、そうなるとは思ってもいませんでした。その後、あれ以上に恵まれたいとは考えませんでした。

 私の唯一の目標は、よい仕事をすることだけです。人が商品を好むかどうかは考えていません。私に必要なのは自分がそれを愛し、目標を達成すること。それ以外には何もありません。

 ルービックキューブは、人々との最強の絆を生みました。それはもしかしたら、難しい問題でも解くことができるよ、自分以外の誰にも頼らなくても成功できるよ、と人々に教えたからかもしれません。

【注】
1)Science, Technology, Engineering and Math-ematics、すなわち科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する語で、2000年代に米国で始まった教育モデル。科学技術開発の競争力向上という観点から、教育政策や学校カリキュラムを論じる時に言及されることが多い。
2)Ernö Rubik, Cubed: The Puzzle of Us All, Weidenfeld & Nicolson, 2020.(未訳)

スコフィールド素子/訳
(HBR 2020年11-12月号より、DHBR 2021年2月号より)
Life’s Work: Ernö Rubik
(C)2020 Harvard Business School Publishing Corporation.

Pictoral Parade/Getty Images
エルノー・ルービック、1980年頃。

エルノー・ルービック(Ernö Rubik)
ルービックキューブ 発明者

[聞き手]
アリソン・ビアード(Alison Beard)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』シニアエディター