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アウトソーシングの満足度が低い理由
この世にビジネスが生まれて以来、いまやウィジェット(ごく小さなソフトウエア)の開発からサプライヤーへの支払い、給与事務の処理に至るまで、業務のほぼすべてがプロセス化されている。
戦略上、不可欠なプロセスにせよ、そうではないにせよ、これらはおおむね社員たちの手によるものだった。効率的なものもあれば、非効率なものもあった。しかし、外注しようにも委託先がどれくらいちゃんとやってくれるのか、これを判断する方法がなかったため、ビジネスプロセスは自前で運営されてきた。
1970から80年代にかけて、アメリカ企業はTQM(総合的品質管理)によってビジネスプロセスを改善した。90年代には、リエンジニアリングによる抜本的改革が取り組まれた。そしてここ10年間は、シックス・シグマが広く採用され、いま一度(改革ではなく)改善に回帰している。
ところがビジネスプロセスを改善しても、コスト削減やバランスシートの改善には直結しないことが多い。そこで20世紀末にかけて、早期に実効を上げる方法として、ビジネスプロセスやケイパビリティ(実行能力)をアウトソーシングすることが広まり始めた。
以前、アウトソーシングの対象といえば、建物の保守管理や法律関係の特殊業務など、ごく一部の補助的な業務だけだった。しかしいまや、数千人規模のケイパビリティがアウトソーシングされるようになった。
このような変革の先駆けとなったのが、イーストマン・コダックやデュポンなどが自社の情報処理業務をアウトソーシングしたことだった。これに続いたのが、ビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)である。具体的には、AT&Tやブリティッシュ・テレコム(BT)などの企業が、従業員の給与や年金、諸手当等の管理、人材採用、人事コンサルティングとITサービスなど、人事関連業務をアウトソーシングし始めたのだ。
また、ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)やプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などの企業は、財務や会計の主要業務をアウトソーシングした。ナイキやヒューレット・パッカード(HP)は製造プロセスのかなりの部分をアウトソーシングしたが、これらの企業の委託先は往々にして海外だった。
これらの企業がBPOに引かれたのは、主にコスト削減とバランスシートのスリム化にあった。しかし、現実にはこれらだけでなく、柔軟性が高まり、特殊な専門知識や技術にもアクセスできるようになった。