有能な嫌われ者か
愛すべき愚か者か

 職場には、特有の緊張関係が存在する。これを改善することは経営課題の一つである。複雑な仕事を成し遂げるには、さまざまな能力を持ち合わせた人材を集めなければならない。しかし、知識や行動の異なる人たちが集まれば、当然組織内には亀裂が生じる。

 現在の事業環境は知識とコラボレーションを基礎としているため、人間関係の円滑化は成功の必須条件である。たとえば、文化の異なる部門同士で必要な情報を共有する、限られた経営資源を争奪し合う部門同士のコラボレーションを築く、クロス・ファンクショナル・チームがその持てる力の総和以上の価値──間違っても合計以下ではない──を生み出す。これらの問題は、組織図を子細に眺めたところで解決することはできない。組織内で非公式な協力関係が形成されるプロセスを理解することが重要なのだ。

 職場内の人間関係は仕事を通じて形成されていくが、それは一部分にすぎない。たとえば、特定任務が与えられたクロス・ファンクショナル・チーム内には業務上の公的な人間関係が存在しているが、その成否を左右するのは私的な人間関係である。

 本稿は、企業内の私的な人間関係が形成されていくプロセス、ならびに仕事のパートナーを選ぶ基準について、驚くべき事実を明らかにする。ただし、そこにはプラスとマイナスの両面がある。そこで、マイナス面を抑制し、プラス面を促す有効な方法について解説したい。

 人は何を基準に一緒に働く仲間を選別するのだろうか。ある人は有能なスター社員と一緒に働くことが名誉だと思い、またある人は戦略的に重要なポストに就いている人の下で働くことで、自分も昇進できると考える。

 さまざまな基準があるが、重要な点は2つある。一つは仕事の能力。たとえば「ジョーは仕事ができるか」というものだ。もう一つは好感度。つまり「ジョーはいい奴か」である。しかし、なぜ、どれくらい重要なのかについてははっきりしない。

 我々はこの疑問を解明すべく、営利目的と非営利目的、大組織と小組織、北米とヨーロッパなど、異なる4つの組織で調査を実施した。各組織において、人々が他のメンバー全員に抱く感情を理解するために、仕事上のつき合いの深さ、仕事への評価についてヒアリングを試みた(囲み「調査の概要」を参照)。その結果、能力と好感度という2つの基準に照らして、次の4つのタイプに分けられた。

(1)有能な嫌われ者:有能だが、つき合いたくない人

(2)愛すべき愚か者:有能とはいえないが、一緒にいて楽しい人