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流布される
裏打ちのない主張
「多様性に富む取締役会が、企業とその構成員に価値をもたらすことが、ビジネスケースで示されています」
「どの組織階層であっても、従業員の多様性を徹底的に追求するビジネスケースは、年を追うごとに説得力を増しています。(中略)その証拠に、ダイバーシティが業績に好影響を与えることが、複数の研究で実証されています」
「ビジネスケースは以下の事実を明確に示しています。女性が会議に加われば話し合いが有意義になるだけでなく、意思決定プロセスが改善され、組織は強くなります」
これらは、企業におけるダイバーシティ向上を呼びかけるために各社のCEOが最近出した声明であり、我々が世界中のビジネスリーダーから耳にする意見を代弁している。
これらに共通する点は3つある。いずれも、女性や有色人種の採用を増やすビジネスケースについて論じていること、善意の発言であること、そしてこうした主張は、実際には確固とした研究結果に裏打ちされているわけではないということだ。
筆者らがそう論じるのは、組織において人種やジェンダーの多様性を高めた場合に見込める成果の検証に、いち早く乗り出した研究者だからである。1996年にはHBRに論文"Making Differences Matter: A New Paradigm for Managing Diversity[注]"を寄稿し、その中で、ダイバーシティの理解と活用によって革新的な方法を採用する企業こそ、多様性に富む従業員構成のメリットを十二分に享受できると論じた。
ここで言う革新的な方法とは、社会に埋もれている「アイデンティティグループ」の人材採用を強化し、離職防止を図ることだけに留まらない。彼らが自分のアイデンティティに関連して持ち合わせている知識と経験を、学習材料として活用し、中核業務の実行方法をどう改善すればよいかを割り出すまでが含まれる。
筆者らの研究によれば、このアプローチを用いたチームでは、同質的なチームやメンバー間の差異から学ぼうとしない多様なチームよりも成果を上げていた。また、さまざまな意見に価値があり、チームの一体化のために意見の違いを抑え込む必要がないというメッセージも発信していた。こうした姿勢に後押しされ、従業員は仕事をどう進めるべきか、目標を達成する最善の方法は何かについて再検討するようになっていた。
筆者らはこうした手法を「学習と効果のパラダイム」(learning-and-effectiveness paradigm)と名付けた。ダイバーシティに対する学習志向、すなわち特定のアイデンティティグループの一員としての経験を踏まえて、業務や製品、ビジネスプロセス、組織の規範を見直す力を育めば、企業の効果を高めることができるとも論じた。筆者らはいまでも、この論文の根拠となった調査が有効であり、研究結果から導き出された結論は正しいと考えている。



