目先の報酬よりも
キャリアアップを重視する
さまざまな職業人にキャリアに関する交渉について述べてもらうと、多くの人がまず思い浮かべるのは、報酬パッケージをめぐる採用担当マネジャーとの交渉だ。そういうシナリオが頭に浮かぶのはなぜかといえば、報酬をめぐる交渉は特に気まずくストレスがたまるため、記憶に残りやすいからだ。
給与や手当に関して合意するのは重要だが、キャリアについてもっと幅広く考えないと、キャリアアップの貴重なチャンスを逃しかねない。たとえば、女性は男性との賃金格差を縮める手段として、給与アップの交渉をすることを促されるようになってきた。しかし各種の調査研究によると、女性の賃金が男性の8割程度なのは、同じ仕事に対する賃金の格差よりも、男女のキャリアの差によって説明がつくという。
筆者らの研究やエグゼクティブコーチングの経験からわかるのは、給与や手当について交渉するより、役割(権限の範囲、能力開発の機会)について交渉するほうがキャリアに有利に働く可能性が高いということだ。また、仕事と生活のバランスが崩れた時は、仕事の量やそれに影響する諸条件(自身の責任範囲や勤務地、出張要件など)について交渉するのが、有給雇用の継続や職業上の成功のためには重要かもしれない。