2019年からのグローバルイニシアティブとは?
そもそもの発端は2012年であるが、2019年からオラクルは「Oracle@Oracle」というスローガンの下、これまでの成果をグローバルで社外に積極的に還元する活動を始めた。その前年、日本では経済産業省が『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』を公表している。このレポートが節目となり、営業/マーケティング、経理・財務、人事、生産などのLOB(Line of Business)リーダーたちが、データを活用してビジネスに貢献しなければならないという意識を持つように変わった。それ以前はどこかで「データのことはIT部門に任せておけばいい」と考えていたのではないだろうか。しかしそんなLOBリーダーたちが「それではダメだ」と思い直し、「自分ごと」としてデータ活用を考えるようになったという意味で、このレポートが果たした役割は大きい。
湊氏は「Oracle@Oracle」の成果を紹介していく中で、顧客企業の幹部から「DXは“第2章”を迎えた」という話を聞くようになったと打ち明ける。最初は何か新しいツールを導入すれば変われると考えていたが、思うように成果が出ない。データ活用がうまくいかない背景には、プロセスドリブンでシステムを構築してきたことが問題であると気付き始めたと指摘する。オラクル自身がデータモデルの統一から始めたように、データドリブンアプローチで第1段階をクリアすることは、AIや機械学習をビジネスに組み込む上で極めて重要である。湊氏は「大量にデータを集めればいいのではなく、クリーンなデータを大量に集めないと意味がない」と主張した。
オラクルのDX支援、その3つの強み
オラクルが企業のDX支援をする上で強みと考えていることは3つある。第一にシングルデータプラットフォームである。先に挙げた同じ顧客であるにもかかわらず、システムごとに異なる取引先コードを使うようになった根本原因は、システムごとにデータベースが異なるためだ。ある取引先に製品を販売したとする。営業活動はSFAシステムに入っているが、売上を計上するには会計システム、営業にインセンティブを支払うためにはHCMシステムにデータを渡さなければならない。シングルプラットフォームであれば、システム間のデータ連携がスムースかつ迅速にできる。
第二に製品ラインアップがコンプリヘンシブ(包括的)であることだ。顧客体験価値向上のための「Oracle Cloud CX」、人財管理・給与計算・タレントマネジメントの「Oracle Fusion Cloud HCM」、財務・会計では「Oracle Fusion Cloud ERP」、サプライチェーンマネジメントの「Oracle Fusion Cloud SCM」に至るまで、多種多様な業務をSaaSとしてカバーしている(図2)。一般的にSaaSの分野は特定の業務機能に特化しているケースやポイントソリューションを提供しているケースが多く、導入を拡大するほど、一貫性のあるデータモデルでビジネスを進めることが難しくなってくる。これとは対照的に、オラクルはあらゆる業務機能をカバーするSaaSを提供しているのが大きな特徴だ。

図2:オラクルが提供するSaaS製品群
第三の強みは強固なデータセキュリティである。オラクルのルーツは米中央情報局(CIA)の情報管理システムを構築するプロジェクトから始まったデータベース製品にあり、これから多くのSaaSを使いこなしていく企業にとって、データセキュリティの知見があることは、安心してSaaSを導入する材料になるはずだ。