デジタル変革モードに応じて
融合先を選択すべき

 DIとDXは、ベイカレントが定義するデジタル変革の2つのモードである。デジタル技術という道具を使って、ビジネスモデルを構成している要素を高度化するのがDIだ。ビジネスモデルの構成要素には、「顧客価値」「主要プロセス」「経営資源」「利益方程式」の4つがあるが、これらの要素をデジタルで高度化させるものだ。

 一方、DXとは、デジタルを使ってビジネスモデル要素を転換し、戦う市場やビジネスモデル自体を変えていくことと定義できる。

 DIの事例としては、サイバーエージェントのインターネット広告事業が挙げられる。同社は広告制作のプロセスで、リアルCG(コンピュータグラフィックス)とAIを組み合わせてバーチャルモデルを生成することで、モデルの選定から撮影までのクリエイティブ制作プロセスを簡略化した。

 DXの事例には、ダイキン工業がある。同社はB2Bの事業領域で「エア・アズ・ア・サービス(AaaS)」という新たなビジネスを展開している。これは、空調設備を販売するのではなく、快適な空調環境をサブスクリプション(定額課金)型で提供するもので、モノ売りからサービス提供型にビジネスモデルを転換した好例だ。

 2つの論点に話を戻すと、目指すデジタル変革モードがDIであれば、ビジネスモデルの構成要素の高度化を図ることになり、デジタル部門の融合先はIT部門が妥当ということになる。

「主要プロセスの改革には、ITの刷新が不可欠であり、強いリーダーシップの下、デジタル+IT部門で、レガシーシステムに立ち向かっていく必要があります」と則武氏は語る。

  一方、DXを図るならば、顧客価値や利益方程式といったビジネスモデル構成要素を転換することになる。これらは事業部門にとっての死活的なテーマであることから、デジタル部門の融合先としては事業部門が妥当となる。

「この場合も、強いリーダーシップの下にデジタル+事業部門で、ビジネスモデルをセルフディスラプション(自己破壊)していくことが有効です」。そして、則武氏は「デジタル部門と他部門を融合させる先駆的な取り組みが奏功するかどうか、今後の動向から目が離せません」と語り、講演を締めくくった。