顧客に寄り添い続けて
収益性を高めていく
カスタマーサクセスをゴールとしたビジネスが、なぜ企業の競争力を高め、業績向上につながるのか。川上氏は「顧客に寄り添って状況を常に把握すると、タッチポイントが増えます。それは結果的に課金ポイントの増加にもつながります。また取り引きの期間が長ければ課金ポイントが増え、収益性の向上も期待できます」と説明する。
販売した洗濯機の利用頻度が低下した場合、その理由を尋ねることで製品の欠点が見つかったり、利用するために必要な補助的機能やサービスがわかったりする。それは製品の質の向上のみならず、周辺サービスの開発にもつながり、ひいては課金ポイントを増やすことにもなる。
量販店が値下げ競争にしのぎを削るなかで、家電を正価で販売して高収益を上げている「でんかのヤマグチ」(東京・町田市)という電器店がある。その原動力は、営業担当者によるきめ細かいフォローだ。顧客をセグメント化したうえで得意先を優先的に訪問し、困りごとに耳を傾けることで顧客の信頼を獲得、次の商談につなげている。
そうした営業スタイルとは正反対に見えるグーグルやアマゾン・ドットコムなどのGAFAと呼ばれる巨大企業も、じつは顧客に寄り添うことでビジネスを大きく成長させてきた。顧客の利用状況を見ながら利便性を改善したサービスを提供し、顧客はより便利な生活を享受する。まさにビフォアとアフターの差分の積み重ねがビッグビジネスを生み出してきたのだ。
顧客に寄り添うビジネススタイルは、これまで製品の売り切りで終わっていた製造業でも取り入れられつつある。2021年3月期に純利益を1兆円台に乗せたソニーグループは、ゲームやネットワークサービス、音楽のストリーミング配信などで売り上げを拡大し、繰り返しサービスを提供する「リカーリング企業」へと変わりつつある。