ダイバーシティを真に理解するための
新たなパラダイム

 企業はなぜ、ダイバーシティに取り組むべきなのか。この問いに対して、多くのマネジャーは最近まで、差別は法的にも道徳的にも間違っているからだと明言していた。しかし、今日では別の意見も口にするようになった。いわく、従業員の多様性が高まれば、組織の有効性も高まる。従業員の士気が上がり、未開拓の市場セグメントに進出しやすくなるだけでなく、生産性も向上する。要するに、ダイバーシティは業績に寄与するというのだ。

 筆者らはその通りだと確信しているが、その説が本当だと仮定すると、ダイバーシティがもたらすポジティブな影響はどこに行ってしまったのか。米国企業はこの20年以上、ダイバーシティ向上に向けて多種多様な取り組みを進めてきた。しかし、そうした取り組みの結果、組織の有効性が飛躍的に高まった例はほとんどない。それどころか、職場のダイバーシティを高めようとしたら逆効果になった例が多い。なかには、従業員同士の対立が深まって、企業業績の足を引っ張った事例さえある。

 本稿では、ダイバーシティ向上の取り組みが期待通りの結果を出していない理由を説明するとともに、ダイバーシティを理解し、活用するための新しいパラダイムを提示したい。