コロナ禍が都市の在り方を変える
テレワークによって、オフィスコストは削減されたはず。その分をアメニティ(快適性)レベルにくわえて真に創造的なオフィス(プライベートスペース)やパブリックスペースの創出に投資すべきだと紺野氏は提案する。ナレッジワーカーはどこにいても仕事ができる半面、適宜専門知識を結合する「場」を求めるからだ。
今後、オフィスの低層部を開放するというようなプライベートスペースのパブリック化や、都市が持つ公的空間を協働の場として使うパブリックスペースのプライベート化が進み「プライベートとパブリックの境界線がなくなっていく」と紺野氏は考えている。
「ワーカーが都市から郊外へ移ったとしても都市がなくなっていくとは思いません。むしろ、都市は役割を変えて進化していく」というのが紺野氏の結論だ。「過去、人類はパンデミックのたびにテクノロジーを活用し、都市のイノベーションを起こしています。今や都市がオフィスなのです」。
たとえば14世紀にフィレンツェがペストに襲われたとき、ウイルス禍が収束すると逃げ出した市民が再び戻り、宗教都市から商業都市へと様相をがらりと変えた。19世紀にパリでコレラが流行したときは、“密”を解消するために道路を拡張し、シャンゼリゼ通りが生まれたが、そこに自動車の時代がきた。
21世紀のパンデミックでは、「デジタル化と都市の衛生面でのレジリエンス(復元力)をてこにして都市全体の次元が上がり、知を創出する場として、ますます『知識都市』としてのパブリックスペースの役割が大きくなる」
快適なオフィスをつくる、知の創造の場としてのパブリックスペースをデザインする、ABWのような自由な働き方を導入する──。ナレッジワーカーが働きやすい環境を整えることは、経営者が最も優先すべき経営判断だ。