アフリカ市場は本当に有望なのか

 南アフリカでFIFAワールドカップが開催された2010年のこと。「時は来た」(It's Time)を意味するツワナ語のフレーズ"KeNako"が世界じゅうにこだまし、アフリカの時代の到来が宣言された。それはあたかも、100万本のブブゼラがけたたましく鳴り響いているかのようだった。経済学者も、コンサルタントも、ビジネス・リーダーも、皆、20世紀最後の20年に失われた活気がアフリカ経済に戻り始めたと考えた。

 それでも、大半の企業の足取りは重く、アフリカ進出には慎重である。アフリカが短期間で注目を浴びるようになったのはコモディティ商品の価格が世界的に高騰したからであり、したがって、活気づくアフリカ経済の影響を受けるのは、主に石油企業や鉱山関連の企業であると考えたのだ。

 また、アフリカで事業を展開するには巨大な不確実性を織り込む必要がある。この点をビジネス・リーダーたちに痛烈に再認識させたのが、アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、チュニジアなどで最近勃発した政治的混乱であり、コートジボワールでの内戦である。アフリカでは、一部の急激に成長している国々の間で民主化運動が広がっている。将来成功する可能性が最も高い国々に進出するには、最も大きなリスクを負わなければならない。多国籍企業が直面するジレンマである。