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知財の問題は山積している
ITグールーの一人、スチュワート・ブランドは「情報は自由を求めている[注1]」と主張した。そのとおりかもしれない。しかし、情報が特許や著作権という鎧で守られている場合、その情報を解き放つのは、海賊版の製作者やフリーランスの模倣者である。
発展途上国でも技術革新が急速に進んでいるため、海賊版の製造が可能になり、知的財産の権利者たちを悩ませている。たとえば、ファイル共有のような技術は業界そのものの存続を脅かしかねない。
このように発展途上国で知的財産権侵害の発生率がかなり高いのは、取締機関の及び腰、制裁措置の甘さ、抜け穴だらけの法律といった問題があるからだ。
たとえば、任天堂のコピー商品が中国で大量に流通している。2003年だけでも、7億2000万ドルの売上げが失われたと推定される。同じく、中国で「ヤマハ」とついたオートバイ6台のうち、おそらく5台はにせ物といわれる。
ソフトウエア企業の業界団体、ビジネス・ソフトウェア・アライアンスによると、アジア太平洋地域、中南米、東欧でインストールされたソフトウエア・プログラムの半数以上が、法的に認められた知的財産の海賊版だといわれる。
知的財産の権利者が直面する問題は、第1号商品を誕生させるのに要するコストが、コピー商品の製造者がそれを複製するコストよりもはるかに高いことだろう。とりわけデジタル化された知的財産の場合、複製コストはごくわずかである。
発展途上国でこのような被害を被っている企業の多くが、現地で自社商品を販売したり、工場を建設したりすることを躊躇し、先進諸国と同じような法的環境が整備されるまで棚上げとする決定を下している。
たとえば、WTO(世界貿易機関)に加盟を果たした中国は、今後、外国の知的財産権の保護に責任を負わなければならない。また、中国企業が技術革新をはじめ、その成果を応用して需要の大きい商品を開発するようになれば、知的財産権の保護は、自国の利益につながることを中国政府も認識するだろう。