オフショアリングはほんの一部にすぎない

 ここ数年、オフショアリング(海外移転)、つまり低賃金国に雇用を移すことで、コストを大幅カットできると、すべての企業が再認識している。しかし、我々マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが実施した調査によると、オフショアリングという現象は、グローバリゼーションによって産業が改革した結果の部分的な産物にすぎない。

 製造プロセスとサプライチェーンの合理化を、国もしくは地域単位からグローバルへと広げれば、コストを劇的に減らし、価格を下げて需要を増やし、新たな顧客を獲得し、さらには新しい市場に進出することも可能だ。

 グローバリゼーションは成長の可能性を極大化する。しかし、過去においてこのことを突き詰めてきた企業は少ない。ましてや、これを積極的に実現しようと、そのための戦略を立案した企業はさらに少ない。

 事実、オフショアリングという表層的な現象に目を奪われて、全体像が見えていない。オフショアリングという潮流は、真のグローバル経済に向かう発展過程の一局面にすぎない。

 商社は100年以上も昔から、海外市場にあふれる新たな顧客層を目指して、故国を後にビジネスに乗り出していた。1980年代には日欧米のメーカーが、低賃金国に工場を建て、工員を雇い、製品を母国に輸出するようになった。90年代になると、デジタル家電など、一部の業界がコンポーネント生産と最終組み立てを低コスト国に移し、グローバリゼーションをもう一歩推し進めた。

 そして今日、グローバリゼーションの波は、サービス産業までも変貌させている。通信費が下がる一方、文書のデジタル化が進んだため、いまやさまざまなサービス業務、事務業務が遠隔地でも処理できるようになった。

 データ入力、取引事務処理、コール・センターによるカスタマー・サポートなどはすぐに浮かんでくるところだが、いまではソフト開発、商品設計、医薬品のR&Dなど、高いスキルを要する仕事までが低賃金国へ流れ始めている。