マイクロソフトの失敗

 2013年8月、マイクロソフトのCEOであったスティーブ・バルマーが突然、「後継者が見つかり次第、CEOの職を辞任する」と発表した。ここから、2010年代の中でも非常に大がかりなCEO探しが始まった。またこれは、リーダーシップの承継において、何をすべきで、何をすべきでないかを考えさせる事例ともなった。

 この頃、マイクロソフトは利益額では米国で第3位、時価総額では第4位だった。それにもかかわらず、また評価の高い巨大グローバル企業であったにもかかわらず、同社はバルマーの後継者について、何も計画を立てていなかったようだ。しかも、この頃の状況をよく知る人によると、バルマーは何年もあまりよい業績を上げていなかった(識者からは、モバイルやソーシャルメディア、映像への進出が遅れたこと、買収や商品のてこ入れなどの失敗などが指摘されている)。

 彼の在任期間中には、ウィンドウズ事業を率いていたスティーブン・シノフスキーや、Xboxの責任者であったドン・マトリックら、有力な幹部も同社を離れており、これも同社の状況がよくないことを示唆していた。こうした状態であるならば、マイクロソフトはバルマーの有力な後継者候補を、外部人材も含めて、見つけていてもよいはずだった。