マーケティングの失敗は致命傷となる

 的外れなマーケティング戦略は、ずさんな会計処理や財務慣行よりも、株主価値に大きなダメージを及ぼす。このおかげで、躍進しようにも、足を引っ張られてきた企業もあろう。通信から航空、消費財、金融まで、あらゆる業界において、マーケティングの失敗が低成長と低収益率を招いてきた。

 現場の担当者にしても、マーケティングを広告や販促と混同しがちであるが、それは違う。マーケティングの4P(商品、価格、場所、販促)が示しているように、マーケティングは広告と販促以上の役割を果たす。典型的には、市場調査から商品開発、顧客管理、そして販売まで、顧客の声に耳を傾け、これを実現させる活動を整えるものだ。

 マーケティングは、顧客が何を望んでいるのかを明らかにし、そのニーズに応える商品開発を支援する。そして、収益性の高いリレーションシップを生み出す。

 商品開発とマーケティングを切り離せば、手頃な商品を短期間でつくることも可能だろう。しかし、顧客が本当に望むもの、そして寿命の長い商品を開発することは難しいだろう。

 全社戦略とマーケティングがかみ合っていれば、おのずと成長が促される。しかし、それぞれがちぐはぐという企業がほとんどである。リピート・オーダーの回数など、標準的な指標に照らす限り、マーケティングは奏功しているかに見受けられよう。戦略上の目標が市場シェアの拡大であれば、リピート・オーダーを増やすだけでは十分とはいえない。

 大半の組織において、マーケティング活動は役員室から遠く離れたところで実施されている。マーケティング・マネジャーがROIに責任を負い、マーケティング部門の活動がどのように戦略に貢献しているかについて詳しい説明を求められることも稀である。

 これはけっして職務怠慢というような問題ではない。実際、ほとんどの企業が、実効性の高いマーケティングに努めている。むしろ、問題はその近視眼である。全社戦略とマーケティングの関連性を正しく理解し、問題の原因を突き止め、解決できる者が社内にいないのだ。