部下に失敗を促してしまう上司
部下が仕事で失敗する、あるいは単に業務成績がぱっとしない。そんな時、上司が自分のせいだと思うことは少ない。むしろ、部下が仕事をわかっていないのだと主張するはずだ。もしくは、成功したいという意欲が足りない、優先順位をつけられない、指示に従おうとしないと言うかもしれない。どんな理由をつけるにせよ、失敗の原因は部下にあって、責任を取るべきは部下だと見なされる。
しかし、本当にそうだろうか。無論、答えが「イエス」の場合もある。部下の知識やスキルが足りない、あるいは単に意欲が不十分なために担当業務をまっとうできない状態で、いっこうにこなせそうにない場合もある。しかし、部下の成績が振るわないのは、ほとんど上司の責任という場合もある。あえて言うなら、そういうケースも多い。
「責任」という言葉は強すぎるかもしれないが、方向的には間違っていない。筆者らの調査では、部下の成績不振を上司が助長している事実が強く示唆されている(囲み「調査について」を参照)。よかれと思って行動している上司が、無意識のうちに部下の成績不振に加担しているというのは、どういうことだろう。基本的には、力不足と見なされている従業員が失敗する流れをつくり、強化するのである。