2018年に全社横断の専門組織としてDX(デジタル・トランスフォーメーション)センターを発足させた住友商事は、その後、DX技術専門会社の設立、コーポレートベンチャーキャピタルの立ち上げなど変革への動きをいっきに加速させ、2020年には総合商社として初の「DX銘柄」に選定された。
未来のあるべき姿に向けてDXプロセスを確立する方法論について、同社DXセンター長の芳賀敏氏とアビームコンサルティングの山田貴博氏が意見を交わした。

DXセンターが横串を通し事業部横断で価値を創出
山田 御社は2018年にDXセンターを発足されましたが、大手総合商社で初めて全社横断のDX推進組織を設立した狙いは何だったのでしょうか。
芳賀 当社には現在、金属、輸送機・建機、インフラなど6つの事業部門があります。顧客起点で提供価値を高めるには事業部門の枠を超えて対応しなくてはならないケースが増えており、2015年頃から事業部に横串を通す組織の必要性を議論していました。
そうした中、デジタル技術をベースに台頭したディスラプターが、既存事業の存続を脅かす場面がさまざまな業界で見られるようになり、我々も先手を打って変化しなければならないという危機感が高まりました。そこでグローバルに横串を通す組織として、DXセンターを立ち上げました。
山田 大手企業といえども、新興プレイヤーと同様にデジタルを基盤としてビジネスプロセスやビジネスモデルを聖域なく変革していくことが必要で、DXセンターを軸にそうした変革に他社に先駆けて取り組み始めた御社の経営陣には、不退転の決意を感じます。
芳賀 DXセンターを立ち上げてから最初の2年は、RPAやAI-OCR(注)などのツールを導入し、業務プロセスの効率化と本格的なDXに向けた環境整備に取り組みました。
当社グループには約935の事業会社があり、幅広い産業分野でグローバルな現場、顧客接点を持つことが大きな特徴です。そして、それぞれの現場をデジタルでつなぐことで、新たな価値を創出できることが独自の強みでもあります。そこで、この1年半ほどはそれぞれの現場でデジタル技術やデータを活用し、どう価値を生んだかを、再利用可能なユースケースとしてまとめる作業や、総合商社ならではのデータ/デジタル技術を用いた事業開発プロセスの整備も同時に進めています。