情報提供に対する報奨金制度は、取り締まりを進めるうえでの手段として広がってきた。たとえば2019年には、米証券取引委員会が不正摘発に貢献した8人に対し、約6000万ドルを払っている。ただ、この制度によって根拠のない告発が助長され、さらには、情報提供者によって企業が調査の機会を設けることが阻止されてしまうとの批判もある。新たな研究は、こうした主張について検証している。

 研究者らは、1994~2012年に虚偽請求取締法(米政府からの金銭の不正受給を取り締まることが目的)に基づいて起こされた、数千件の訴訟を分析した。米国の3つの控訴裁判所が下した、内部告発に対する報奨金を増やす判決の影響を調べるため、それらの地区でその後に起こされた訴訟と、他の地区での訴訟を比較した。

 3つの地区での訴訟件数は増加したが、最初に企業に対して通知せず、提訴に至る割合には影響が見られなかった。また監督官庁は、平均してこれらの事案の調査により多くの時間を費やし、司法省は訴訟により多く加わり、和解に至った訴訟の割合は増加した。研究者らは「これらの結果は、情報提供への報奨金制度が不正行為の摘発に役立つという見解を支持するものだ」とする。「内部告発者に報奨金を与えると価値のない訴訟が起こされる、という批判的な見解とは相容れない」