いずれの企業も
イノベーションの創出に悩んでいる
多くの企業においてイノベーションは、膨大な時間と資金を費やしてマネジメントしているにもかかわらず、依然としてもどかしい取り組みである。イノベーション施策はかなりの頻度で失敗に終わる。他方、ポラロイド、ノキア、サン・マイクロシステムズ、ヤフー、ヒューレット・パッカードほか数々の企業が身をもって知ったように、イノベーションを見事に成し遂げた企業であっても成果の維持には苦慮する。
革新力の構築と維持は、なぜこれほどまでに難しいのだろうか。原因は一般に「実行の失敗」にあるとされるが、真因ははるかに根が深い。イノベーション強化策にまつわる諸問題の根源は、イノベーション戦略の欠如にあるのだ。
戦略とは、具体的な競争目標の達成に向けて互いに支援・連携する一連の方針や行動への、深い関与にほかならない。優れた戦略は、組織内の多様なグループ間の足並みを揃え、目標と優先順位を明確にし、それらに沿った努力がなされるようお膳立てをする。企業は一定期間ごとに事業戦略全体(対象領域とポジショニング)を定め、マーケティング、オペレーション、財務、R&Dなどさまざまな職能部門がそれをどう支えるべきかを詳しく説明する。しかし、20年超にわたって幅広い業界の企業を対象に研究・コンサルティングを行ってきた筆者の経験からは、イノベーション努力と事業戦略を整合させるために方針を打ち出す例は稀だといえる。