時間の浪費癖は心理的葛藤から生じる

 マネジャーはさまざまに部下を分類するものだ。外向的性格か内向的性格かといった分け方もあれば、リスクの許容度を見る場合もある。その一方で、あまり活用されていないのが時間の使い方であり、無駄を基準とする分類法だ。その巧拙が組織の生産性や収益性に与える影響度を考えれば、なるほどである。

 時間を浪費する部下を抱えたことのあるマネジャーならば、何事も先送りにする者、期限前に仕事を終えようとしゃかりきになるが仕上がりの悪い者など、時間を有効活用できない人々がモラールや仕事に、いかに壊滅的な影響を及ぼすかは先刻承知のことだろう。

 時間の浪費という問題は、いわゆるタイム・マネジメントとはまったく無関係である。人生に規律を持たせるための実践的な知恵は多くの人に役立つものだが、タイム・マネジメントの教訓は時間浪費社員に何ら役立たない。

 時間の浪費は往々にして心理的葛藤が原因であり、ワークショップやマネジャーの叱責などで簡単に直せるものではない。

 実際、彼ら彼女らが抱えている問題は、時間そのものが原因ではなく、傷つきやすい自尊心であったり、欠点を指摘される、あるいは査定されることへの無意識の恐怖だったりする。それゆえマネジャーは、タイム・マネジメントの方法を教えるのではなく、不安要素に着目して対処すべきである。

 スコット・ガートナーという、大手アパレル・メーカーに勤務する、クリオ賞を受賞したクリエイティブ・ディレクターを例に考えてみよう(この論考に登場する人物の名前はすべて仮名である)。

 スコットがその仕事を始めた頃、彼の完璧主義はチーム・メンバーにとって許容範囲内にあった。彼のこだわりから仕事が遅れることもしばしばだったが、いつも素晴らしい作品を仕上げていた。

 しかし残念ながら、キャリアを重ねるにつれて、彼の完璧主義は自虐的なものへと発展していった。ほとんどの仕事がままならなくなり、特にクリオ賞を受賞した後には、仕事の遅れは度を越えていった。