覇権を拡大し続けるビッグテック

The Every
Dave Eggers, Vintage, 2021.(未訳)
Dave Eggers, Vintage, 2021.(未訳)
デイヴ・エガーズの新しい小説The Everyでは、世界的なインターネット・プラットフォーム(前作の『ザ・サークル[注1]』のサークル社)が巨大なオンライン小売業者を買収して誕生したエブリー(Every)社が、数十億人ユーザーの行動を監視して収益化するビジネスを完成させる。そのキャンパスは通称エブリウェア(Everywhere)。その中にいる人々が世界とその富を支配する。エブリウェアの外──ノーウェア(Nowhere)──では人々が無思慮にテクノロジーに接続しているか、無意味に戦おうとしている。
ビッグテックに対して高まる私たちの不安が、完璧に描かれているではないか。この10年、ビッグ5──フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)、グーグル/アルファベット、アマゾン・ドットコム、アップル、マイクロソフト──は驚異的なやり方で覇権を拡大してきた。
いまやテクノロジー市場のほとんどの領域を支配しており、2020年には1兆ドル以上の売上げから5社で2000億ドル近い収益を得た。ビッグ5の創業者は莫大な財産を、ベンチャーキャピタリストやバンカーは彼らよりちょっぴり少ない財産を手にしている。初期の従業員は株を高値で手放して現金を得て、現役の従業員(工場や倉庫ではなくコンピュータを使って働く人々)は高額の報酬を得ている。