グローバルな組織改革が遅れている

 2009年夏、スターウッド・ホテル・アンド・リゾート・ワールドワイドのCEO、フリッツ・ヴァン・パーシャンは、妻のローラと中国について話し合っていた。中国で営業中のホテルはすでに70軒、さらに80軒を建設中で、アメリカに次ぐ大市場となっていた。ヴァン・パーシャンが冗談で「そろそろ本社を中国に移したほうがよさそうだな」と言うと、ローラは「簡単に言ってしまえば、そうかもしれないわね」と答えた。

 翌2010年、ヴァン・パーシャンは、1カ月間ではあるが、それを実行に移してみた。2011年6月8日から7月11日まで、スターウッドの経営陣8名は上海を拠点とした。上海と、公式に本社が置かれているニューヨーク州ホワイトプレーンズとは12時間の時差がある。経営陣はその分早く仕事を進めていたのだ。

 現在スターウッドには、毎年1カ月間、ブラジル、ドバイ、インドなどの急成長市場にその拠点を移転する計画がある。こうした本社移転の効果は未知数だ。象徴的な出来事だったと判明するかもしれないし、学ぶための時間であるかもしれない。あるいは、スターウッドの本社を恒久的に移転する第1段階となるかもしれない。スターウッドのエピソードからわかるのは、現在、多国籍企業は組織の問題を抱えているということである。