過大なコストを見積もりがちな
サプライチェーンのデジタル化

 ほとんどの経営幹部は、大企業のサプライチェーンをデジタル化すれば数千万ドルかかると思い込んでいる。想定するのは、3~5年かけた大掛かりな変革の取り組みだ。クラウドテクノロジーに多額の投資を行い、すべての製品コンテナや施設にRFID用ICタグやリーダーを設置し、3Dプリンティングやロボティクステクノロジーを導入し、パフォーマンスや状態をモニターするために作業現場の機械に新しい計器を設置することが必要になるだろう、と。部門間の壁を打破し、競争優位性をもたらす統合型サプライチェーンをつくり出すためには、そのすべてが必須だという考え方をしている。

 しかし、筆者らは多くの企業のコンサルティング活動を行う中で、それに代わる方法を発見した。グローバルなファッション小売業者、消費者向けパッケージ商品・消費財(CPG)の大手メーカー、グローバル家電メーカー、PC、タブレット、ワークステーションを製造するハイテク企業などでの経験から、数百万ドルの費用で12~24カ月かけてサプライチェーンを最新化すれば、大きな恩恵が得られることが証明されている。

 このほどよい取り組みを行う企業では、すぐに利用可能なデータを収集する。高度なアナリティクスを活用して顧客やサプライヤーの行動を理解し予測する。在庫、生産、調達の意思決定を最適化させて、コスト削減と応答性(responsiveness)向上を図る。さらに、一部を自動化して、既存プロセスの刷新や新プロセスの導入を行う。