価格は顧客へのメッセージ

 2017年6月3日、明滅する青いライトが次々にロンドン橋へと向かった。テロ攻撃の一報を受けて警察車両が現場に集結したためだ。警察車両は、レストランやバーで土曜の夜を楽しむ人々の脇を猛スピードで走り抜けていく。路上にいた人たちは危険を察知し、ウーバーを呼んで安全に帰宅しようとした。だが、ダイナミックプライシングのアルゴリズムが機能した結果、最初の通報があった午後10時7分からの43分間で、この地域のウーバーの料金は200%以上跳ね上がった。

 このエピソードは、社会的不安が生じた際に料金が高騰するという、ウーバーで頻繁に発生するトラブルの一つにすぎない。2016年のニューヨークで起きた爆発事件、2017年の米国の反移民政策に抗議するタクシー運転手のストライキ、2020年のシアトルの銃乱射事件の時も同様に料金が高騰し、シアトルの例では500%も釣り上がった。

 ウーバーのアルゴリズミックプライシング、すなわちアルゴリズムによる価格設定は、9300万人のアクティブユーザーからたえず批判を受けてきた。ロンドン橋のテロ攻撃の夜も、現場の周辺で起こったアルゴリズムによるサージプライシング(混み合っている時間の料金割増)を手作業で停止するまで、これが適用される状態が50分も続いたのである。