コロナ禍は人々の働き方や生活スタイルだけでなく、「何を大切にするのか」という価値観にも大きな影響を与えた。コロナ禍によってデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させようとしている企業は多いものの、そうした変化を正しくとらえないままでは、顧客の期待とのギャップが広がるばかりで、ビジネスの成果にはつながらない。
DXの推進度合いと
顧客への対応力に相関性
「企業がもともと持っていた課題感がコロナ禍によってさらに大きくなり、DXへの本気度は高まっているのですが、顧客の変化を正確にとらえ、行動に移すことができていないため、ビジネス成果に結び付いていない様子がうかがわれます」。こう語るのは、企業の事業変革支援を数多く手がける電通デジタルの執行役員、安田裕美子氏である。

安田裕美子氏
安田氏の指摘は、ビジネスパーソンを対象とした調査結果によっても裏付けられている。
電通デジタルが2017年から毎年実施している「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査」の最新結果(調査は2021年秋に実施)では、「すでにDXに着手している」と回答した企業は81%に上り、「コロナ禍による企業内でのDXの位置付けの変化は?」という設問に対しては、65.1%の企業が「重要度が上がった」と回答した。多くの企業が、重要な経営課題としてDXに取り組み始めていることがわかる。
一方で、回答企業の約4割(39.2%)は、「変化する顧客の期待に応えられていない」と感じており、顧客の価値観の変化にキャッチアップできていない企業が少なくないといえそうだ。
最新調査結果の注目点は、顧客の期待に応えられていない企業は、DXへの取り組みを「計画中」「計画自体がない」といった回答が多く、逆に期待に「応えられている」とした企業ほど、DXが「完了している」「複数の領域で取り組んでいる」などと回答していることだ。つまり、DX推進が変化する顧客ニーズへの対応に強く相関していることが浮き彫りになったのだ。