戦略立案から構築に至るデジタル活用が
競争力の源泉

野村総合研究所
経営DXコンサルティング部
ビジネスプラットフォームグループ
グループマネージャー
寺坂和泰氏

 デジタルの活用により、サプライチェーン上のリスク回避や素早いリカバリーに成功した事例を紹介しよう。

 ある日系メーカーの欧州販売法人は、営業部門の見通しと実績のずれを補正するために、NRIが開発した需要予測ツールを活用していた。だが、コロナ禍によって、需要予測を見直す必要が生じた。従来の統計モデルでは、急激かつ大幅に需要が落ち込むと、需要は当分戻らないという予測が導かれてしまう。

 「我々は、ロックダウンなどコロナ禍に関連する要因をパラメーターに加えることで予測精度を高め、人間の感覚値に左右されない意思決定を可能にしました」(寺坂氏)

 また、SaaSサービスを活用したサプライチェーンの可視化事例も出てきている。ある米系メーカーでは、スエズ運河におけるコンテナ船座礁事故において、発生30分後には、対象船舶の貨物に加えて、前後船舶の関連貨物のインシデントリポートが提供され、迅速かつ無駄のない代替策を取ることができ、損失を最小限に留めることに成功した。

 「元来47%の精度しかないETA(入港予定日時)は、リスクイベントが発生するとさらに到達時間が読めなくなり、サプライチェーンの遅延リスクに直結します。これまでは船会社への連絡確認しか手段がなかったものが、SaaSサービスからデジタル予測データ取得が可能となり、これによる最適な対応策を実行することが競争優位を築くポイントとなっています」(寺坂氏)

 NRIでは昨今、サプライチェーンのレジリエンス(柔軟な回復力)の高度化に関する企業からの相談が急増しており、サプライチェーンデザイン、需要予測、計画最適化ソリューションなどの提供を行っている。また、2021年10月にはグループ会社のNRIセキュアテクノロジーズと共同で、SCM領域のコンサルティングサービス強化方針を発表した。

 NRIが開発した「サプライチェーン戦略テンプレート」を用いてクライアント企業の事業特性・戦略を分析し、サプライチェーン全体の方向性を導き出すと同時に、対応すべき課題を立案。これに、NRIセキュアの「セキュリティ評価フレームワーク」を組み合わせ、クライアントの事業特性に合わせた安全・安心なデジタルサプライチェーンの構築を実現する。

 「サプライチェーン上のリスクは、複雑かつ多岐にわたっており、デジタルの活用が必須です。デジタルによる可視化、最適化、自律化という3つのステップを着実に進化できるよう、サプライチェーンの高度化を一貫して支援します」と、寺坂氏は力強く語った。

■お問い合わせ
株式会社野村総合研究所
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2
大手町フィナンシャルシティグランキューブ
E-mail:SCM_inquiry@nri.co.jp
URL:https://www.nri.com