井上発人
モニターデロイト
マネジャー

井上 フィジビリティスタディへの参加者からは、「災害発生時には、正確な情報の収集が必要だ」「水を持ち出そうとしたが、重くてどこまで持っていったらよいか迷うことに気づいた」といった声も聞かれ、意識変化や行動変容に一定の効果があったと感じています。

 PCを使ったシミュレーション体験は、あまり使う機会のない高齢者などには難しいのではないかという意見もありました。しかし、実際にやってみると、60~70代の方も問題なく使用いただけたりと、それほど大きな問題ではなく、むしろ多くの参加者は、「仮想空間で災害を疑似体験してみることの意義は大きい」と感じてくださったようです。

 マンション管理組合の方からは、「コロナ禍で、なかなかリアルな防災訓練ができないので、こうした機会を設けてもらえるのはありがたい」という声もありました。また、PTAの方々からは「子どもたちにこそ、話して伝えるだけでなく体験が有効。子どもも参加できるようにしてほしい」という要望もいただいています。こうした声を活かしていくことも、社会課題解決の過程において重要なことだととらえています。

変化を起こしたい共創パートナーの参加に期待

――「日本版Smart Societyプロジェクト」では、可視化されたニーズや行動パターンをもとに、企業や行政といった共創パートナーによる新たなサービス開発を促進することも目指しているそうですが、「デジタル防災訓練」では、どのようなパートナーの参加を期待していますか。

上村 民間企業については、幅広い業種からの参加を期待しています。なかでも鉄道、バスなどの公共交通機関や、ホテルなどの宿泊業は、避難の際の移動手段や受け入れ先となるという点で、親和性が高いのではないかと思っています。

赤松 マーケティング手段や情報収集を期待する企業のほか、社会課題解決のための取り組みであるという目的と意義に賛同して、よりよいプラットフォームづくりに参画してくださる共創パートナーと、同志としてこの取り組みを広げていきたいですね。

井上 個々の企業だけでできることは限られますから、多様なパートナーとともに社会的インパクトのあるエコシステムをつくることが、次のステップとして重要なポイントです。

――エコシステムの共創パートナー集めに向けた具体的なプランがあれば聞かせてください。

井上 フィジビリティスタディで、市民の本音に基づく行動はどのようなものかということが少しずつ見えてきたので、そのニーズに対応するサービスや施策が設計できる可能性のある企業や行政機関との対話のフェーズに入っています。今後、実証実験を進めることで、新たなサービスの可能性がさらに見つかるのではないかと期待しています。

赤松 NTT Comが持つ企業や行政機関とのつながりを活かしてパートナーを募っていくことで、スマートソサエティの実現へと、着実に、そして大きなムーブメントへと育てていきたいと思います。

上村 共創パートナーと組むことで実現できるサービスのアイデアも考え始めています。

 たとえば、災害の72時間前に避難するのが理想的ということであれば、旅行業や宿泊業に「避難」と「ワーケーション」を兼ねた3泊4日程度の旅行商品を企画してもらうという方法もあるかもしれません。ワークショップの参加者からも、「そういう視点はなかった」と興味を持っていただきました。

井上 実証実験を通じて、災害時における人々の実際のニーズや行動が可視化されれば、求められるサービスのあり方も変わってくるかもしれませんし、さらには、これまでの規制やルールを変更するという議論にもなるかもしれません。そうした変化をみずから巻き起こしたいという企業や行政機関とのエコシステムによって、CSVによる社会課題解決が進むと期待しています。