明暗を分けた2つの企業
第2次世界大戦に続く数十年間、マネジメントシステムが大きな注目を集めた。時の代表的な経営者たちは、企業の急成長と多角化への対処に役立つ、数々のプランニングツールやコントロールツールの開発を歓迎した。マネジメント革命に最も熱心に加わったのは、ノートン・コーポレーションという、3Mと競合する産業用研磨剤メーカーである。
ノートンは多角化を通した利益ある成長を目指し、1970年代初めにいち早く市場戦略が収益にもたらすインパクトを測るPIMS(profit impact of market strategies)というコンピュータモデルを活用して、37のファクターが事業の収益性に及ぼす影響を分析した。市場成長率と市場シェアを軸としたボストン コンサルティング グループのマトリックス、すなわち企業の諸事業の戦略的役割をキャッシュフローの特性に着目して分類するツールを、他社に先駆けて取り入れたことでも知られる。
最新のマネジメントシステムを熱心に導入する姿勢を貫き、9BOX分析の利用に乗り出したのも早かった。9BOX分析とは、競争上の強みと事業固有の環境の魅力度をもとに、各事業の戦略を決めるためのツールである。ノートン本社の経営幹部層は、プランニングや管理リポートを裏付けとし、スタッフによる分析にも支えられながら、前記および類似のツール類を活用して買収先候補をスクリーニングする一方、既存事業には増益を続けるよう発破をかけた。