インターネットイニシアティブは、法人・個人向けにMVNO(仮想移動体通信事業者)としてさまざまな通信サービスを提供しているが、2018年以降は国内初の「フルMVNO」の強みを活かし、法人向けソリューション開発を強化している。昨今は、ローカル5Gなどの先進的な無線技術のショールーム「白井ワイヤレスキャンパス」を開設、企業のIoTビジネスの創出や社会課題の解決に貢献するケースも増えている。同社のフルMVNOサービスの導入事例と今後の戦略を紹介する。
柔軟性と自由度をもたらす
フルMVNOサービス
MVNOとは、ネットワーク設備などをMNO(Mobile Network Operator)から借り受けて、通信サービスを提供する事業形態を指す。MNOとは異なる付加価値の提供を目的として開発されたものの一つが、一般的に格安SIMとして知られる通信サービスである。
インターネットイニシアティブ(IIJ)は2008年に法人向けの、2012年に個人向けのMVNOをスタートさせた。2018年以降は、国内4G(LTE)網を利用する初の「フルMVNO」として、さまざまなMVNOサービスソリューションを提供している。

MVNO事業部
ビジネス開発部長
小野大典氏
「フルMVNOは、ネットワーク設備の一部あるいは要素を、他社に依存することなくみずから直接運用してサービスを提供します。なかでも加入者管理機能を自前で運用するのが大きな特徴で、これによって、契約オペレーションやネットワークの柔軟性、自由なSIMの形状が可能になるといったメリットが得られます」。同社MVNO事業部ビジネス開発部長の小野大典氏はこう説明する。
たとえば、SIMは契約と同時に課金が発生するため、従来型のMVNOでは、店頭にSIMの在庫が並んでいるだけで、MNOに対して費用が発生していた。しかし、フルMVNOでは、加入者管理をIIJが行うため、利用者がSIMを購入したタイミングで回線を開通し、その時点から課金することが可能だ。「モノをつくって、それに通信機能を持たせ、IoTビジネスを検討されている法人のお客様にとっては、フルMVNOサービスを活用することでコストを抑えながら事業展開を図ることができます」と小野氏は続ける。
コネクティビティ形態の多様化に伴い、SIMの形状もバリエーションが広がっている。スマートフォンで使われているSIMカードやIoT機器に組み込むチップ型SIMといった「物理SIM」のほかにも、SIMカードを使わないデジタルなSIMといわれる「eSIM」、通信モジュールにSIMの中身の情報(プロファイル)を内蔵させることで必要基板スペースを減らし、部品点数の削減、製品の小型化を可能とする「Soft SIM」が登場し、IIJではこれらのソリューションを提供している。