1052人のスター・プレーヤーへの徹底調査

 もしあなたが我々の知っているようなCEOと大差なければ、第一線の有能な人材をめぐる戦いの先陣を切ろうと、いまこの瞬間も塹壕のなかでチャンスをうかがっていることだろう。

 選りすぐりの人材を求める戦いは、かつてほど前の激しさはないにしろ、景気回復と共に再び熱を帯び始めている。景気が後退していても、いずれにせよ、だれもがトップ・パフォーマーを発掘せんと、みずから出陣して採用を続けてきた。これは、後塵を拝したり、人任せにしたりできない重要な仕事だ。

 また、実際に第一級の人材にめぐり会った暁には、この期待のエリートを招き入れようと、あらゆる条件を提示する用意を整えていることだろう。巨額の年俸、契約ボーナス、ストック・オプション等々──。

 それがどんな条件であろうと、結局のところ、現在の知識経済は世界規模に広がっており、優れた人材をあらゆるレベルで配置しさえすれば、ライバルを打ち負かせると、多くが信じて疑わない。

 今日の産業界では、変化を予期し、それに即対応し、不確実な状況下でも的確な意思決定を下すことが要求されている。そこでは選り抜きの者でなければとうてい無理である。これに異議を差し挟む者がいるだろうか。

 くわえて、Aクラス人材は野心的で、頭が切れ、行動力にあふれ、カリスマ性も備えている。社内でそのような人材を育成する時間とコストを考えれば、社外から人材を調達することはもはや避けて通れない。どうしてBクラス人材でよしとできようか。新しいスター・プレーヤーに高い理想に向かって邁進してもらえれば、必ずや企業の利益も天高く舞い上がろうというものである[注1]

 このような考え方は、たしかに説得力にあふれ、ここ10年ほど、さまざまな書籍やマネジメント・グールーたちが取り上げてきた。実際、多くの企業において、これが人材マネジメントの柱になっている。

 ただし、一つだけ問題がある。一世を風靡したアイデアの多くがそうであったように、いざそうしてみると思ったようにはいかないのだ。