顧客対応のまずさが
瞬時に拡散されるリスク
企業は並外れた顧客サービスを提供しようと手を尽くしている。それもそのはずだ。調査では幾度となく、優れた顧客サービスが将来のビジネスの「潤滑油」になることが示されている。だからこそ、靴のネット小売りザッポスは「顧客との電話がどんなに長くなってもかまわない」として、サービス担当者に顧客一人ひとりと絆を築くよう奨励している。高級ホテルのザ・リッツ・カールトンは、宿泊客の問題解決や宿泊体験の改善のために、すべての従業員に1人当たり最大2000ドルの支出を認めている。アラスカ航空も同様に、乗客のクレーム対応のためにマイルやお金、食事券を配布する権限を全従業員に与えている。
IBMが2021年に世界のCEO3000人を対象に実施した調査[注1]では、高業績を上げているCEOが最優先事項として顧客体験と顧客関係の2つを挙げていた。しかし、経営幹部はそうした点をよりよいものにするためにどうすべきかについては協議しているものの、そもそも顧客と従業員との関係がバイアスの影響を受けやすいものであることを見過ごしている。
スターバックスのあるマネジャーは2018年、何も注文せずに店内にいた黒人男性2人を警察に通報した。マネジャーは不法侵入だと見なしたが、彼らは知人と待ち合わせしていただけだった。その約1年前、化粧品チェーンのセフォラは、アジア系の顧客から訴えられていた集団訴訟で和解した。同社は、転売目的で商品を大量に購入していると誤解してアジア系の顧客アカウントを凍結したことは不当であると訴えられていたのである。