公式化ステージと変革持続ステージの両輪で回していく

 業容のトランスフォームのため、リクルートが最初に実行したのは「事業戦略の見直し」だ。具体的には既存領域を「拡大(拡張)戦略」「生存戦略」「撤退戦略」の各領域に分類し、拡大(拡張)戦略は「新規事業戦略」へと発展させた。

 同時にそれを遂行するための「組織再編」が必要だった。具体的には、特定のプロジェクト遂行のため、異なる知識・スキルを持ったメンバーが集まって組織が編成される「機能別組織への再統合」、そして「プロジェクト型のプロダクト体制への転換」だ。

「2012年の分社化で各事業会社はうまく機能していたものの、全体で見ると、各社のプロダクトの進化とその速度にばらつきが生じていました。その弊害として、同じ機能のプロダクト開発をそれぞれが行うなど無駄が多く、また暗黙知化された独自ルールも各社で横行し、グループ全体のガバナンス不全も起こり始めていたのです。これが組織再編に至った背景です」

 組織再編には、解決すべき大きな課題があった。それは「意識の統一」だ。2013年からの7年間で、同社正社員数は5042人から8322人に増員。うち74%が分社化以降の入社組で、20代と30代の比率が84%だった。

「自分の世代であれば、リクルートという一つの会社に入社し、その後は事業部を異動するのが常でした。しかし、2013年以降の入社組は、分社化後に入社し、そこで何をするのかある程度役割が固定されていました。2021年の組織再編は、各社の独自ルールで仕事をしてきたメンバーの意識を統一し、組織として一つにまとめる取り組みでもありました」

 北村氏は土台づくりのため、再編実行の前年に当たる2020年からの準備期間で、34回にわたり全社員に向けてトップメッセージを配信した。一人ひとりのもとに届くまでの間に独自解釈・意訳がされることなく直接思いを届けることで、意識の統一を図ったのだ。

「リクルート創業から60年。当社は『創業ステージ』から『拡大ステージ』へと、ステップアップしてきました。次に達すべきステージは、組織の安定性・継続的な成長に向けて属人性を排除し、生産性の向上を図る『公式化ステージ』です。このステージでは一定程度まで成長するものの、その後、苦しくなる確率が極めて高くなります。それに抗うには、『変革持続ステージ』も必要です。具体的には、事業の停滞を防ぎ、変革を持続的に創出するため、組織に自律性・柔軟性を持たせようとする段階です。公式化ステージと変革持続ステージの両輪で回していくことが、プロジェクト型経営では大切です。同時に、環境変化速度に合わせた組織の許容度の調整が欠かせません。環境の変化速度が遅い市場・時代に組織の許容度を高めると無駄が生まれますが、反対に環境の変化速度が速い市場・時代に組織の許容度を低くすると、その企業は衰退しやすくなります。環境変化と組織の許容度のバランスを取っていくことが、プロジェクト型経営には肝要なのです」