リクルートホールディングスは60カ国1000拠点でビジネスを展開している。グループ社員数5万1757人(2022年3月31日時点)、グループ企業数351社(同)、連結売上高は2兆8717億円(2021年4月1日~22年3月31日)に達する。同ホールディングスは、HRテクノロジー事業「RGF OHR USA, Inc.」(ブランド名「Indeed」)、グローバル 人材派遣事業「Recruit Global Staffing B.V.」、そしてメディアアンドソリューション事業「リクルート」の3ユニットで構成されている。リクルートにて代表取締役社長を務める北村吉弘氏が、同社の経営戦略について解説した。北村社長の講演後には、独立研究者・著作家・パブリックスピーカーとして活動するライプニッツ代表の山口周氏が聞き手となり、リクルートが進めるプロジェクト型経営についても語られた。

リクルート 北村吉弘 代表取締役社長
※本コンテンツは、2022年5月26日に開催されたダイヤモンド社ビジネスメディア局主催(企画:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、協賛:マネジメントソリューションズ、ライズ・コンサルティング・グループ、アイシンク)、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー マネジメントフォーラム「DX・イノベーション創出を実現する プロジェクトマネジメントの実践」の基調講演「環境変化と許容度の経営 ~プロジェクトマネジメント型の経営に必要なリーダーの行動や考え方~」と、特別対談「プロジェクトエコノミーの到来」の内容を採録したものです。

リクルートはなぜ分社化した企業群を再統合したのか

 1960年3月31日。東京・新橋の雑居ビル屋上にあった小さなペントハウスから、リクルートの歴史がスタートした。創業から60年。同社コーポレートメッセージである「まだ、ここにない、出会い。」を、個人ユーザーと企業クライアントに提供するビジネスモデルで一大企業に成長している。

 そんなリクルートでは近年、大規模な組織再編を実施している。2012年には主要事業を分社化、リクルートホールディングスを筆頭とした持ち株会社制へと移行。その後、2021年4月、分社化した完全子会社7社を吸収合併(2020年1月に発表、同年4月から先行統合)し、現行の「リクルート」は、その吸収合併存続会社として活動している。

 なぜリクルートは分社化した企業群を再統合したのか。その背景には、いまから数年前に起こった外部環境の変化があった。2020年4月、ビッグテック企業GAFAM5社の時価総額が東証1部上場企業2169社の時価総額を上回った。北村氏はそれが起こるまでの10年間を「ハードの参入障壁が崩れ、ソフトウェアがすべてを飲み込んでしまった。デコンストラクション(脱構築)の荒波を感じました」と表現する。

 リクルートの主要事業は、メディア・アンド・ソリューション事業である。新聞広告から始まり、情報誌、インターネットへと事業の舞台を拡大し、現在はリクルートブランドの各種サービス開発・ソリューション開発も行っている。

「ここ10年間で、新規事業や新市場を開拓する方法が、同一装備(ビジネスモデル)でいち早く新たな山(市場)を登り切る『山登り型』から、重力(技術進化)によって発生する流速(違うビジネスモデル)を先読みしながら新たな波(いまはない市場)にいち早く向かう『急流下り型』へと大きく変化しました。他産業の新たな動向、技術的な背景・方向性を理解し、これまでとは違うビジネスモデルにトライ・アンド・エラーし続けなければ、取り残されてしまうでしょう。当社がこれまでメディア企業からサービス提供・ソリューション提供企業に事業拡大してきたのと同様に、これからも業容をトランスフォームさせていくことができる体制づくりが必要でした」