そこで山口氏が、同社プロジェクト型の「評価」についてこう質問を投げかけた。

「一般的な組織では組織長が評価を下す。業務内容が明確に定められたジョブ型雇用では、上がってくる成果に応じて待遇が変わっていきます。しかし兼務が多いリクルートのプロジェクト型の体制下では、所属長に加えてプロジェクトリーダーが複数存在することになるかと思います。誰の声が、評価のベースになるのでしょうか」

 北村氏の答えは明快だ。

「その人に配分されている業務のウェートで評価が決まるため、それらのウェートごとに設定されたミッションに対する達成度合いを定量・定性の両面から評価しています。具体的には主務の上長が兼務の上長に『何%分働いていたか』を確認し、ウェートごとの評価の合算でその人の評価を決めています。各上長(プロジェクトリーダー)による面談が非常に多くなりますが、それも各上長が一人ひとりの仕事ぶりを見て、きちんと評価を所属長へフィードバックするため。このフィードバックカルチャーが、プロジェクト型の体制を支えているのです」

組織経営は「100点満点」を目指してはいけない

 リクルートのようなプロジェクト型への転換にせよ、あるいはジョブ型雇用制度の導入にせよ、それらはいずれも「会社のシステムを変える」ことを意味する。リクルートは「システムを変える」までの道程に、会社のカルチャーを変えていく地ならし期間を設けている。

「システム的に会社を回そうと思ってもうまくいきません。暗黙知化されている企業風土やカルチャーをいかに形式知化するかが重要です。当社は創業60年以上の老舗ではありますが、同時に74%が10年以内に入社している『若い会社』でもあります。たとえば、社員に『10年以上前こんなことあったよね』と話を振っても、共感してくれる社員は多くいません。暗黙知化されているゆえに消えてしまっているものがあるからです。守るべきカルチャーと捨てるべきカルチャーの両方がありますが、いずれにしても言語化(形式知化)しておかなければ、守れるものも守れません」(北村氏)

 最後に北村氏はこう話す。

「当社のようなプロジェクト型を導入するしないにかかわらず、組織経営は『100点満点』を目指さないのが賢明と考えています。プロジェクトでも新市場開拓でも新規事業でも、100点満点が取れることなんてほとんどありません。80点で十分事業として成立する状況ならば、残りの20点分はその後の改善ポイントととらえることで、次の動きにつながりやすくなります。満点を取ること自体は本当に素晴らしいことだと思いますが、ビジネスにおいて、それを目指せば目指すほど、現状維持の意識が増していきます。『80点でもうまくいっているなら』と達成度合いやテンションを少し抑えてあげると、新たなものも見えやすくなるのではないでしょうか」(北村氏)