政治献金の矛盾
2021年4月14日、『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙にある意見広告が掲載された。上下両院ともに共和党が多数を占めるジョージア州で3月25日、投票権を制限する州法が成立したことを受け、米国人の投票を困難にする「いかなる差別的立法」にも反対するという内容だ。その下にずらりと並んだ署名リストには、全米200社の社名とともに、グーグルの親会社アルファベットの名前があった。
だが、そこでちょっとした問題が持ち上がった。グーグルはこれに先立ち、ジョージア州をはじめ、全米各州で同様の州法成立を推進する「共和党州指導部委員会」(RSLC)に密かに献金していたのだ。また、グーグルの担当者が出席したRSLCの選挙公正委員会の政策作業部会では、「選挙制度改革」こそが「共和党の唯一の防衛線」だとするスライドが上映されていた。グーグルはその数カ月前にも、RSLCに3万5000ドルを直接寄付していた。
このような矛盾(あるいは偽善とも呼ぶ人もいる)は、企業の世界で常態化している。その直接のきっかけとなったのは、2010年に合衆国最高裁が「シチズンズ・ユナイテッド対FEC裁判」で下した判決(以下シチズンズ・ユナイテッド判決)だ。この判決で、企業が政治家や「ダークマネー」を動かす政治団体(献金者を公表する必要のない組織)に献金できる金額の上限が取り払われた。