DEIの実現に向けて
企業はデータを活用すべき
自社のオペレーションの改善、商品・サービスの拡充、あるいは顧客との関係構築が不十分だと判断した企業は通常、目標を設定し、適切な指標を定める。そのうえで、目標達成に向けて前進していることが指標から判断できるまで、さまざまな戦略を試す。それが成果を上げるための定石であり、企業が真に懸念する問題が何であれ、この手法を活用することで対処している。かくして「大事なことは測定すべし」といわれるようになった。
だが、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)に関しては、おかしな手法がまかり通っている。DEIで成果を上げるカギとなるのはデータの追跡だが、根拠に基づく指標を軸にした手法を採用していない企業があまりに多い。DEIが道徳的要請であることを認識し、利益の増加に寄与することを理解している企業ですらそうだ。
それでは筋が通らない。事実として、現状を測定し、進捗状況を監視する指標がなければ、DEIを実現するための努力は例外なく、暗闇で鉄砲を撃つも同然のいい加減な取り組みで終わる。また、CFOが認識し始めている通り、コストもかさむ。ハーバード・ケネディスクール教授のアイリス・ボネットによると、米国企業はDEI研修に年間約80億ドルを費やしているが、その成果は驚くほど小さいという。