筆者2人がそれぞれの職場で自己啓発セミナーに参加した時のことだ。どちらのイベントでも、幸福に関する真理を説いていた。一方のセミナーでは、登壇者いわく、幸福は人の健康、思いやり、生産性、さらには昇進のチャンスを高めるという。もう一方のセミナーでは、激しめのダンスを強制される場面があった。体が喜びであふれるはずだという(参加したほうの筆者は何とか逃れたい一心で最寄りのトイレに避難した)。
1920年代中頃に、科学者の一団がホーソン工場で照明の明暗をいじって以来(ホーソン実験)、学者も企業幹部も一様に、従業員の生産性を高めることばかり考えている。なかでも、幸福を生産性向上の手段とすることは、最近の企業の間でますます盛んになっているようだ。
企業は金を費やして、幸福を支援するコーチ、チームビルディングのエクササイズ、ゲームプレー、ファンサルタント(職場の幸福促進に努める専任者)、そして最高幸福責任者まで設けた(その一人はグーグルにいた)。こうした活動や肩書きは愉快に、あるいは奇妙に見えるかもしれないが、企業は極めて真剣に取り組んでいる。はたして、それは正しいのだろうか。